[塗料の話] 黒くは塗りつぶさないがRe-made by japanの実力
玄関扉(木建)を塗り替えました。
ほとんどの木製品にはオイルステイン(OS)と言う手法が使われています。楽器もそうです。楽器と家具の違いはトップコート(フィニッシュ)が違うところです。
今回はOSからウレタントップまでをご紹介。
余談ですが「ちゃんと働いてるの?」と今でもたまに言われますが、ちゃんと働いてますし、けっこう良い仕事してます。
DIYを志す方には少々難題かも知れませんが、「プロはこうやってやる」と言う参考程度に読んで頂ければ助かります。
現状から剥離
状態にもよりますがクリア(トップコート)が完全に死んでる場合は下地の色があせてきます。それをできる限り剥離(はくり)します。
剥離剤を使うときは、これでもか!と言うくらいの安全の確保が重要です。
剥離剤が目に入ったら最悪の場合失明します。爪の間に入ったら3日くらい痛いです。その爪の細胞が腐敗する場合もあります。口に入ったら器官までも犯します。入院も可能性としてはゼロではありません。なので、防護メガネ、マスク、ゴム手袋は絶対条件です。
剥離から染色
染色は好みによりますが、改修(塗替え)の場合はほとんどが既存の色よりも濃い色となります。もし既存の色を望むなら剥離に加え灰汁洗いと漂白が必要です。剥離、灰汁洗い、漂白、この3工程を何度か行い白木まで戻します。実現可能ですが現実的ではないことがほとんどです。
今回はオーナーの承諾を得て重厚な色へ変えて行きます。
染色
今回は染色(オイルステイン)にちょっとした工夫をしたのですがそれは比較するものが今回はないのでまたの機会に詳しく書きたいと思います。
色の原則として赤と黄色、そして黒、これが建築で使われる主な原則です。なぜこの3色なのかはまたの機会に説明しますが、それ以外の色は建物に不似合いなのです。扉が緑でも水色でも良いですが扉に合わせた建物を作ることは有意義ではないでしょう。全体のバランスを保つには赤、黄色、黒、この3色で十分なのです。
染色からサンディング
サンディングは説明が難しいのですが、染色した塗料を定着させる役目とトップコートとの接着力を高める役目です。そして何より塗膜を作るのはこのサンディングが効果的です。
古くはトップコートオンリーで塗膜を作るのが主流でしたが、ほとんどのトップコートは完全乾燥が6時間以上なので実際は1日に1回しか塗れませんでした。それがサンディングシーラーの登場によりサンディングの乾燥時間が3時間程度となったおかげで1日で3回くらいは塗れるようになりました。
全ての工程で絶対条件は「完全乾燥」です。乾燥せずに次の工程に移るとろくなことはありません。
何度か重ね塗りをしたのでこの時点で仕上がりに近い状態にできました。
赤い扉が黄色っぽくなったのが分かります。
サンディングからトップ
サンディングまで出来ればあとは楽勝です。サンディング終了の時点で艶が出ているのは塗膜の証です。
ここから気をつけることはただ1点。
塗り残しのないことだけです。
塗り残しがあった場合でも後戻りすることはおすすめしません。
翌日にもう一度塗り重ねれば良いので慌てず確実に仕上げることが大切です。
液だれ(塗料の垂れ)が起こるような塗り方になった場合でも慌てず、翌日にサンドペーパーをあて塗り重ねれば仕上がります。
トップを塗るときは「慌てない」「確実に仕上げる」この2つしか課題がないので事実上慌てる理由がないことを毎回セルフチェックして最後の工程に臨んでいます。
2液ウレタン
今回2液ウレタン艶ありで仕上げました。
もう1日あれば光を反射してまばゆい艶あり仕上げにできますが、今回は改修工事です。自分の実力を突き詰める競技ではありません。現実的な打ち合わせの元で施工しています。完全なる艶ありがベストはどうかは職人の判断ではありません。
「良い仕事」が職人の自己満足になったら、それは「最低の仕事」です。
全体で見たときに艶あり仕上げを違和感なく仕上げることが責務です。
半艶仕上げや艶消し仕上げも発注者の好みによりますが、プロ仕様はやはり艶あり仕上げを上手に仕上げることが一番志気が上がります。志気が上がれば必然的にアイデアが溢れるものです。
OSCL(オイルステインクリア仕上げ)のコツ
コツはただ1つです。
剥離からの工程全てにおいて、その工程で仕上げを目指すことです。
剥離で仕上げる、染色で仕上げる、サンディングで仕上げる、トップで仕上げる、全ての段階で仕上げるつもりで望めば当たり前ですが仕上がります。
材料は次回の機会に載せたいと思いますが全体的な流れは以上です。
感謝
今回は久しぶりと言えば久しぶりに、良い仕事をさせてもらえました。
艶ありはやはり美しいです。
発注者とオーナーに感謝しています。
良い仕事が出来ました。ありがとうございました。