[ノベル] I can not doing /俺には出来ないよ 6/14「暗証番号」
ドリームロード本社から届いた小冊子12月号に記載されていた内容は、
[インターネットで買い物が出来るようになりました。付きましては引き落とし口座またはカード番号、ドリームロードウェブサイトにてドリームロード製品購入のためのドリームロード専用パスワードを登録してください。インターネットでの買い物は来年1月1日からになります]
とても親切で便利なシステムだが、これも中金が無知に漬け込むような親切で利用することになる。
「文洋のパスワードを教えておいて。あと、文洋のグループの主要メンバーのパスワードも」
「え?それは、個人情報になるのでは。他人が使ったらヤバイんじゃないですか?」
「フミヒロ、、、ドリームロードビジネスはチームプレイだよ。文洋もまだお昼の仕事してるし、文洋のグループの人も昼間は注文出来ないことが多いでしょ。メールか電話かをもらえれば俺が代わりにネットで注文しておけるでしょ」
メールが打てるなら自分で注文する時間くらいありそうだが、確かに仕事中の昼にインターネットショッピングにアクセスできるタイミングは少ないかも知れない。文洋は嫌々ながら自分のグループの主要メンバーにそれを伝えた。
グループの主要メンバーの答えは文洋とは真逆で親切なことだと感じたようで直ぐさまパスワードを教えてくれた。それを中金に伝えると中金は先輩面を覗かせながら言う。
「だからさー、みんなで協力し合って成し遂げるのがドリームロードビジネスなのよ。月末最終日はネットワークビジネスじゃなくてもどの仕事も忙しいでしょ。俺、成功してるから昼間とか時間あるのね。だから俺が代わりに、代理発注した方が合理的だよ」
この時期、若竹は中金の仕事のやり方が嫌いだった。自分の持ち物のように他人のネットワークを使い誰が何のためにこのドリームロードビジネスをやっているのかを疑問で満ち溢れさせていた。自分で頑張るからこの仕事に意義を感じるはずだが、なぜかグループの主要メンバーは中金に頼りたがる。それはその人たちが甘えているのかそれとも甘やかす中金の思惑通りなのか、全国にいるドリームロードビジネスのメンバーは自分のパスワードを他人に教えるような仕事をしているのか、疑問は尽きない。若竹の場合その疑問の発信地はいつも中金だ。
ある種の勇気持って中金に迫った。
「中金さん!あまり言いたくはないんですが、前にイカサマで俺が達成したやり方、もう二度とやらないって約束してください。それと!俺と俺のグループの全員にイカサマを勧めないって約束してください」
「、、、、、イカサマって、人聞き悪いよ、、、まあ、でも、もうあんな達成の仕方はやらない。約束するよ」
「本当に約束ですよ」
「しつこいねー、約束するって」
その言葉を信じ決意を新たに若竹は来季もリーダーステータスを目指そうと決めた。
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この物語は筆者が経験したことを基に描いたフィクションです。
I can not doing /俺にはできない 7/14へ続く