[ノベル] I can not doing /俺には出来ないよ 7/14「称号の値段」
太田チコに電話で決意を告げた。リーダーステータスの収入は然程大したことはないし、権利収入と言い切れない部分がほとんどだ。しかし通過しなければいけないなら通過するだけだ。そんなことを電話で話しながら太田チコも若竹を応援していた。
「若竹くん、あっという間にネクストステータスになるし、すごいよね。リーダーテータスって収入は良いの?」
「いや、そんなに良くないよ。昼の仕事と比べたら昼の方がお金多いし、それに、、、」
それに、、、の後に中金のイカサマ提案を言いかけたが辞めた。ここで言ってしまうと太田に嫌われるか知れないし、何より自分自身を裏切ることになると思ったのだ。
「それに?」
「いや、、、それにチコちゃんも必ず成れるよ。だって成れない仕事だったらドリームロードの会社自体が成り立たないでしょ」
「だよねー。でも、なかなかポイントが集まらなくて。どうすれば良いのか実際分からないのね」
「、、、、、誰にも言わないから、、、良かったら教えて、チコちゃんのネットワークの平均獲得ポイントっどれくらい?もしかしたら良いアイデアを俺、持ってるかも知れないし」
「えー!言うの?」
「いや、、、嫌なら良いんだけど、同じグループじゃないから、なんて言うの、仲のいい隣の会社の売り上げ協力って言うか、平均とか分からないとやっぱアドバイスのしようがないと言うか」
「、、、、んポイント」
「え?」
「、、、、、じゅう万ポイント」
「ごめん、聞こえないんだけど」
「、、、、30万ポイント!」
「え?そうなの?」
「本当だよ」
「でもさ、この前、100万ポイントを達成したでしょ、70万ポイントはどうしたの?」
「、、、、、、、、、自分で買った」
「は?」
「だって、何が何でも達成したかったんだもん」
「いやぁぁ、、、良いとは言えないよ。だって70万円だよ」
「だって、、、」
秘密を打ち明けた太田の気持ちを直ぐに察した若竹は気持ちを切り替えて答えを返した。
「あれだ!もう買い占めてのポイント達成は無しにしよう!チコちゃんが70万円を買い占めて達成しちゃったらグループの誰かが真似をするよ。そんなの本文を外れてる。だから、ネットワークを作って、んで、そこからリピートを稼ぐことだけに集中する1カ月をやるんだよ。そうすればボトムのポイントが上がるし、本気の女はカッコいいでしょ。カッコ良い奴に皆が付いてくるよ」
「、、、、ありがとう」
「チコちゃんが100万ポイントを達成したらパーティーの誰かは100万ポイントを本気で達成するって言う原理ね。良いことは半分しか伝わらないし、悪いことは倍になって伝わっ、、、、て、、、いく、、、、、」
最後の言葉を区切る若竹が思い出したのは中金が同じことを自分に言い、そしてその言葉を自分が他の誰かに伝えている姿が何故か悲しかった。自分も時間が経てば誰かにイカサマを提案してしまうのではないかと言う恐怖が若竹に過ぎった。
「、、、、若竹くん?どうしたの?今の良い言葉だった。良いことは半分、悪いことは倍で伝わるって、ありがとうね」
「あ、いや、もう明日、早いからまた明日電話するよ。チコちゃんも頑張ろうね」
「うん。、、、、今度、、、ドリームロードとは関係なしに食事とか、、、どうかな?」
「あ、良いね、、、じゃあ、3月、年明けの1月から必ず100万ポイントを達成して今年一番乗りでリーダーステータスを達成するからその祝賀会を2人でどう?」
「あ!いいねー!じゃあ、その時を楽しみにしてるね。おやすみー」
「おやすみ」
わずか数十分の電話が終わると若竹は頭を掻き毟る不穏に陥った。それは太田との食事の嬉しさではなく、自分がたった1回のイカサマを容認してしまったことに苛立ち、そして後悔を覚えたからだ。自分自身で切り開けるビジネスチャンスが他人の提案でそれもアドバイスではなくイカサマへの誘導だったことに腹立たしさを隠せなかった。
それでもドリームロードを辞めない理由は既に300人を越えるネットワークを作ってしまいその全ての参加者を裏切ることはしたくなかった。一刻も早く中金無しでドリームロードビジネスを始めるには自分自身が成功と言う場所へ行くしかなかった。そんなことを目標にしなければいけないこのビジネスを心から嫌った。もはや夢は中金無しのドリームロードビジネスを作りたいと思うようになっていたのだ。
それはドリームロードビジネスの掲げる「貴方の夢を叶えてください」とは意味の違う夢だった。
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この物語は筆者が経験したことを基に描いたフィクションです。
I can not doing /俺にはできない 8/14へ続く