[ノベル] I can not doing / 俺には出来ないよ12/14「6人の達成者」

それから10日後、今月の終わりまであと5日。

若竹のポイントは全く伸びない。このままでは100万ポイントには届かない。手が無くなったと途方に暮れていた時、電話が鳴る。相手は良子だ。

「おめでとー!リーダーステータスになれたねー!」

「、、、、え?」

ジョークを言っているのかからかっているのか、意味さえも分からなかった。

「あの、今、ポイントを見たら70万ポイントだったんですけど」

ドリームロードウェブサイトのマイページで確認して10分くらい経っただろうか。

「え?何言ってるの?もう一回見てみなよ」

パソコンを立ち上げ確認をしたら自分のポイントが101万ポイントになっていた。

「、、、、!」

「文洋グループは300人もいるんだよ、その一人一人を全員把握するなんて無理だよ。突然注文する人だっているし、ネットワークも伸びることだってあるし、目の前の人だけがネットワークじゃないんだから」

言われてみればその通りだ。知らぬところからネットワークが伸びることもある。それを思えば若竹の知らない誰かが数万円の注文を同時期に行うのでさえ予想できるはずもない。

「、、、、ありがとうございます。なんか実感がないですね」

「そんなもんだよ、ネットワークビジネスって。知り合いだけでやらないから良くも悪くも可能性があるってことでしょ」

「まあ、そんなもんなんでしょうね」

「それより、きっちゃんから聞いてると思うんだけど、620日に達成イベントをやるから」

太田チコから聞いたとは言い出せなかった。

「あ、はい。会場ってどこでしたっけ?」

「いやーねー、会場は有楽町の朝日ホールよ。1000人入るんだって!」

1000人ですか、、、」

「キっちゃんが全部段取りをしてるから、そのうち電話があると思うけど、喧嘩しないでね。文洋くんはその時ニューリーダーステータスで私たちはニューダイヤモンドステータスで、おめでたいことなんだから」

「はい、、、喧嘩なんてしないですよ」

「じゃあ、よろしくねー」

若竹は自分の努力以外でポイントが稼げたことに達成感は少なかったが、これがネットワークビジネスの可能性だと改めて思い知った。さっきまで足りなかった30万ポイントは明らかに権利収入と言えるポイントだ。時間が少し経ってじわじわと喜びが湧き上がってきた。

「うん!これで良い。これで良いんだ」


翌月2月1日。大宰府エグゼクティブステータスのオフィスで達成者の祝福が行われた。そこには川越、六角、若竹、そして初めて会う3人がいた。その3人の様子は垢抜けない洋服に達成を成し得た顔つきとは思えない覇気の無い顔ぶれだった。

初めて会う垢抜けない3人、若竹、六角、川越の6人が中金夫妻の6ラインの面々として顔を顔を合わせた。

それに加え太田チコも無事にネクストステータスを達成したようで、その顔付きはどこか晴れ晴れとした顔にも見えた。

「ありがとうございます。中金夫妻に色々とアドバイスを頂いて無事に達成出来ました。私は中金さんの6ラインの一つではなく7ライン目になるので今回の達成イベントには立てませんが、その時のスピーチを10分だけさせてもらうのでお祝いに来てください」

太田は中金たちの達成イベントのゲストスピーカーに選ばれたようだ。しかし数日前の電話の内容で達成しているかも知れないと思うと胸がざわつく。今それを確かめることは出来ないが例えそうであっても太田チコが喜んでいるのであればそれはそれで良いのかも知れない。


川越を始め太田の4人は同時期にこのドリームロードビジネスに夢を馳せた言わば同志だ。祝福の気持ちは4人共他の誰よりも大きく清らかだ。

そして中金夫妻のダイヤモンドステータスへの第一歩、1ヶ月目を無事クリアした祝福も軽めに行われた。

「ありがとうございます。とても嬉しいです。まあ、まだ1ヶ月目なんであと2ヶ月、、、、いや、焦らず5ヶ月をちゃんと意味あるものにして620日にお祝いされたいと思ってます」

軽めのスピーチが終わると15人いたオフィスは拍手で埋められた。


ミーティングもおおよそお開きの雰囲気になる少し前に太宰府エグゼクティブステータスと中金はオフィスを後にした。

「ちょっとこれから予定があるから先に出るね」

大宰府と中金が出て行ってから少し経って垢抜けしない3人も2人を追うようにオフィスを出て行った。

「なんか、雰囲気が達成者っぽくないですよね」

太田チコが誰もが思う疑問を口にした。

「俺も思った。覇気がイマイチっていうか、、、、」

「、、、、、、、」

「、、、、、、、」

口ごもったのは川越と六角だった。

嫌な予感がした。

==================================

この物語は筆者が経験したことを基に描いたフィクションです。

I can not doing /俺にはできない 13/14へ続く