[ノベル]スパンキーサマー/第9話/久しぶりの再会

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木崎家の入江に学がやって来た。

「ああ、学くん、どうしたの?」

「はい。様子を見て来いって、父が」

「あ、それはありがとう」

「どうですか?」

「まぁ、何も代わりはないよ。でも、塩を作ってるんだ」

「塩?」

「ああ、あれ」

木崎が指を指すと並べられたワカメが程よく白くなっていた。

「すごい!」

「ああ。私は塩の管理で1時間に一度海水をかけなければいけないんだ」

「、、、、、雄太さんと圭介さんは?」

「2人は海岸を散策に行っている。氷川さんのいるキャンプ場まで行けたら様子を見てくるように言ってあるんだ」

「そうですか」

「ああ。ここは蟹も獲れるし、、、、まぁ、魚くらい食べたいけどね。で、そっちはどう?」

「はい。父が小川の水を濾過して水が飲めるようになりました。でも初めはお腹が痛かったですけど、2日目くらいには美味しく飲んでます。あと山菜や木の実でなんとかやってます」

「水?」

「はい」

「、、、学くん、塩はいらないか?」

「塩ですか?」

「ああ、塩だ」

「はい、、、、頂けるなら」

「、、、、、じゃあ、じゃあ、塩、これ半分、持って帰っていいから、水を、、、、これに」

木崎はペットボトルをありったけ差し出し学に手渡した。

「分かりました。じゃあ、今から持って来ます」

「ああ、急いで持って来てくれ」


その頃、木崎の長男と次男は入江から林を通り氷川家のいるキャンプ場に着いた。ちょうど夏樹が貝を探しているところだった。

「あら、木崎さんのとこの、、、」

「あ、、、、、どうも」

「どうしたの?お父さんは元気なの?」

雄太が経緯を説明した。その時、氷川家は3家族がそれぞれ別の場所にキャンプをしていることを初めて知った。

「てっきり立原さんの家族と一緒かと思ってたよ」

「父さんが、もしもの時には別々の方が良いって言うんで」

「まぁ、そうかもね。でも無事で、、、無事って言うか元気で良かったわ。家まで来る?家って言うかテント」

「うん」

テントに着くと5日ぶりの再開に忠男と圭介は喜んだ。それよりもテントの周りに香ばしい匂いがしているのに気が付いた。

「、、、、、、」

「、、、、、良い匂い」

2人のお腹が急激に空になって行く。

「火、あるの?」

「あ、これ?ガスバーナー持ってたから、、、、、でも今はあれだけ」

夏樹が指指す方向に焚き火があった。焚き火は石や岩で上手に組み上げられ簡易的な暖炉のようにも見えた。

「あの火を料理に使っているの。料理って言っても魚と貝だけだけどね」

「魚?」

「ええ。私、針と糸も持ってるから、、、、大物とは言えないけど、小魚なら釣れることもあるわ。お父さんは持ってないの?」

「あの、、、、火を分けて欲しい、、、、、ダメ?」

「良いわよ、、、、でも、火をどうやって持って帰るの?」

「木の枝に点けて持って帰れると思う」

「そう。大丈夫?」

「たぶん。帰ったら塩を持ってくるから」

「塩?」

「父さんがワカメを、、、、なんかやり方は分からないけど、塩を作ってて。いっぱいってわけじゃないけど、少しだけ塩を持ってくるから」

「そう!それは助かるわ!ここの家、魚も貝も不味い!って、、、、うるさいのよ、文句言ってる場合じゃないのにね」

山を抜け立原家にも寄り道する予定だったが、火が手に入るとなると話が変わった。雄太と圭介は海岸線の方が自分たちの家まで近いので海岸線を通って自分に町まで帰ることにした。

「あとでまた来るから!」

「うん。お塩ね、楽しみにしてるわ!」


立原家では香織が兄の帰りを待ちきれず外で1人遊びをしていた。

「ねえ、夏樹お姉ちゃんとこ行って良い?」

「ダメよ、夏樹ちゃんのとこまで山を降りなきゃ行けないのよ」

「だってー、、、、ゲームも無いし、サッカーボールも無いし、、、」

そんなことをしていると学が帰ってきた。両手いっぱいのペットボトルを抱えながら疲れた足を伸ばした。

「おかえり、どうだった?」

「ただいま、あ、木崎さんとこ無事だったよ、、、あ、これ」

一本のペットボトルの底に白く塩が入っていた。

「何それ?」

「塩」

「塩?」

「うん。木崎さん、塩を作ってるんだって」

「へぇ、、、、」

冬美が指に付けて塩を舐めた。

「美味しい!」

「え?え?香織も舐める、、、、」

「今日は山菜が塩味になるわ!」

冬美が喜んで山菜を取りに行った。

「で、塩の代わりに水をくれって」

「水?」

「うん。あっちは水が無いみたい」

「そうか、ペットボトル貸して」

立原はペットボトルに溜めて置いた水を汲み学に渡した。

「今から行って来るよ、明るいうちに帰ってきたいし」

「そうか、たいへんだけど頼むよ。木崎さんにもよろしく言ってくれな」

「うん」

「私も行く、、、、」

香織が一緒に行きたがっているが香織がいると帰りが遅くなるかも知れない。

「香織、明日。明日、氷川さんのとこにお兄ちゃんと一緒に行っておいで」

「え!夏樹お姉ちゃんのとこ?」

「ああ。パパとママも行こう。散歩でもしないとここじゃやることが無いからな」

「やったー!」

学の持って帰ってきたペットボトルを数えると5本だった。その中の1本と自分の持っているペットボトル1本に水を汲んで氷川さんのところに持って行けば喜んでくれるかも知れない。ペットボトルは洗えば何度も使えるから木崎さんも分かってくれるだろう。

それから学は木崎の家に行き、そして山の中にある自分の町に帰ってきた。明日は海沿いにある氷川さんの町まで行く。家族で散歩も悪くないと学は思った。何より夏樹はこの島の中でとても魅力的な女性だ。夏樹に会えるのが楽しみなのは香織だけではなかった。

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3家族を乗せた本格アドベンチャー/ 第10話へ続く

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