[ノベル]スパンキーサマー/第11話/サバイバルの序章
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地震から7日目。今日は予定通りなら船が港に見回りに来るはずだ。皆は約束したわけでは無いが港に集合していた。
「いやぁぁ、、、来ますかね?」
立原が心配した顔で待っていた。
「来るに決まっている。私は氷川グループの代表ですよ、震災がどんなに大きくても1週間でその避難は完了するのが今までだ。遅くとも今日明日には」
「でも、あの地震はかなり大きかったですよね、本土と言うか東京は大丈夫でしょうか?」
「ああ、それは確かに心配だな」
「想像したくはありませんが、、、」
「大丈夫!島でたったあれだけの揺れ、、、、本土は」
氷川が強く言い聞かせたが内心は数日前の地震がかなり揺れたので少々臆病になっていた。声を荒げたのは自分自身の不安を無くすためだった。
「大丈夫!島でたったあれだけの揺れだ!本土はなんとも無い!」
氷川と立原のやりとりを他所に木崎は立ったまま海を見つめていた。少し曇り空で波もいつもよりうねっている。
「降るかもなぁ、、、」
「降ったって良い。船が来るんだから」
木崎と氷川の思惑は少し違うようだ。木崎は振り返り雄太を読んだ。
「分かった。じゃあ、、、」
「大丈夫。入江は船でも行けるから」
そう言うと雄太は港を後にした。どうやら雨を見越して雄太に入江まで戻らせ火の保管とワカメの保管を頼んだようだ。
待っても待っても船は来ないし雲行きも怪しくなってきた。
「学、お前もママと香織を連れて山に帰るか。火の保管も頼みたいし、、、、」
「そうだね。分かった」
香織はまだ夏樹と遊びたいようだったが雲がみるみるうちに黒くなって行くのが怖くて学と一緒に帰ることにした。
忠男は氷川の少し後ろに座り友恵は木が垂れ下がる木陰から動かなかった。夏樹の姿が見えないのはおそらく家に帰り火の保管をしに帰ったと思われた。
そんなことを考えていると小雨が降ってきた。
「あ、、、、、」
「雨か、、、、」
小雨はすぐに本降りになった。波は高くなり素人が見ても船が着岸出来ないのが分かった。
「ダメだな、、、、」
「私たちも、、、、とりあえず氷川さんのとこまで」
「、、、、、仕方がないか、、、」
氷川の町まで戻り木崎と立原は雨の具合を見て急いで自分の町へ向かった。木崎は家まで帰るのに湾岸線の方が近いがこの雨を心配して山を通ることにした。立原の家を通り南側へ降る。立原の家に着く頃には木崎と次男の圭介もびしょ濡れだった。
「木崎さん、雨がやむまでうちで雨宿りしては?」
「いや、雄太が心配なんで」
「そうですか」
「では、、、、まぁ、大したことないですよ。私が自衛隊でシリアに派遣された時は、、、」
「お父さん!」
「あ!今は、、、この話はまた明日」
「、、、、気を付けてください」
「はい。立原さんも」
木崎は無事に家に着いたが島全域が大粒の雨に見舞われた。木崎の家の火も立原の家の火も消えてしまった。氷川の家では暖炉に寝袋をかけ種火をタープの下に置いておいたため辛うじて火はキープ出来た。
この雨がサバイバルの始まりだったのかも知れない。
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3家族を乗せた本格アドベンチャー / 第12話へ続く