[ノベル]スパンキーサマー/16話/水源強奪

===============

地震から12日が経った。木に目印を学が付けていたので日数の目安になった。

しかし色々なことがありすぎて、これが現実なのか夢なのかさえも考える時間がない。これがヴァーチャルゲームならとても良い内容だが残念ながらリセットボタンは無い。明日のことよりも今日のこと、それだけを必至にやらなければいけない12日間が過ぎた。

立原はここのところ小川の水量が減っているのが気がかりだった。

「なんか、最近、、、、水、、、まぁ、島の水だからこんな感じかな、、、」

木崎村と立原村の間に氷川王国が割って入ったのですっかり木崎とも疎遠なっていた。

「たまには行ってみるか」

「私も行くー!」

「じゃあ僕も」

「だったら私も」

家族4人で未開の地である山向こうのトラバースになった。今日は楽しそうだ。危険をなるべく避けるために氷川王国境界線ギリギリの山向こうのルートを辿ることにした。氷川に許可を取れば5mの道を跨ぐことも出来るが山を一度降りてまた登るなら大回りをした方が時間の無駄にならない。

「あ、なんか立ってる!」

立原村から一番近い小さな頂上を登りきった辺りだ。枝を人工的に立ててそこに赤いTシャツがくくりつけてなったのを香織が見つけた。枝にくくり付けられた赤いTシャツはこの山の中ではとても目立つ。何気なく近づいてみると目を疑う光景があった。

赤いTシャツのたもとには小川の源水らしき小さな沼があった。その支流は立原家に向かっている。しかし目新しい人工的な支流が作られていた。その道筋は氷川王国に真っ直ぐ向かっている。

「これは、、、、」

「何?」

人工的な支流は泥と石ころで小川とは言えないがちゃんと氷川王国に向かって流れている。

「これは、、、、?」

そう言えば最近、氷川から水の注文がない。もしかして支流を建設したのが原因で水を手に入れたのだろうか。

「ちょっと、、、、今日、木崎さんのとこはやめて氷川王国に行こう」

「えー!夏樹お姉ちゃんのとこ!」

5mの幅の氷川王国の領土を支流に沿って下る。道は険しいが明らかに人が踏み入った形跡がある。源水から数十mは泥と石ころだったが、中流部では石で形成されている。さらに下ると親水公園のような整った石で流れをちゃんと作っている。所々で簡易的な堰が設けられ水が溜まっている。さらに下ると簡易的な堰に洋服が巻き付けられていたり編んだような形で草木が巻かれている。

「これは、、、、濾過装置?」

一番下まで下るとそこは公園にありそうな洗面所程度の溜まりがあった。真ん中に竹で出来た蛇口のような筒が設置され水を汲むのに便利な作りだった。崖から飛び降りて立原は水に口を付けた。

「少し苦いけど、、、まぁ、、、飲めそうだ」

その光景を氷川が見つけ声をかけた。

「どうですか?」

「、、、、、、」

「いや、山を開拓していたら水源を見つけて。どうせだったらこちらに引いておこうと言うことになってね。これで立原村にもご迷惑な注文をしなくて済むので、、、いやぁ、、忠男と2人でやったから身体のあちこち痛いですよ」

「いや、、、これって、、、」

「はい?」

「これって私の水ですよね?」

「私の水?」

「最近、小川の水が少なくなっていて、、、」

「水源は私領土から出ているので私の水と言うのはいささか、、、」

「うちはどうなるんだ?」

「え?」

「氷川さんに水を取られたらうちは、、、」

「水を取られた?それは言い過ぎですよ。それに山菜があるじゃないですか」

「あの水源は?」

「あああ、あれは木崎さんに聞きました」

「木崎さん?」

「責任追求であちらも現金が無くなってね、塩を多めにもらうことで決着したんですが、いつだかに立原さんが、ほら、ペットボトルで水を持って来てくれた時、木崎さんのペットボトルで持って来たでしょ。塩と水を交換したつもりがペットボトル1本足りないと思ってたら、ほら、私にくれたでしょ、あれを、、、」

「あ!」

あの時は親切で氷川に水を渡したのだが木崎としては立原が氷川にコビを売ったようにも見えるかも知れない。

「いやぁ、、、私もね、土地の話をしに行っただけなんですが、水の話をしたら水源のことを言うから。まぁ、木崎さんもそれが小川の水源かどうかは知らなかったんですけどね」

「、、、、、、」

「元々、山に登ったことが無いから見つけた時はびっくりしました」

「、、、、、、、」

立原村から木崎村の途中に水源は無い。おそらく木崎が初めて入江に行く途中で見つけたんだろう。

「でも、、、、あの水は、、、」

「はい。お互いに協力的に使いましょう」

肩が落ちた。完全に氷川王国の植民地になったのだ。

=================

3家族を乗せた本格アドベンチャー / 第16話へ続く

ブログ小説のラベルはこちら→ノベル