[ノベル]スパンキーサマー/第18話/宣戦布告of the 島
翌朝早く立原と学は木崎の村を目指した。許可なく氷川の領土を追加するのはルール違反だがこれから戦争をする国家元首には国境などどうでも良かった。幅5mの領土を我が物顔で跨ぎ越え木崎の領土へ入った。山を降ると木崎の官邸が見えてきた。
遠くからでも木崎が疲れているのが分かった。子どもたちは蟹を焼いて食べている。お裾分けで持って来た水を渡すと木崎は辛そうな顔をして言った。
「塩を渡したいんだけど、、、氷川さんのとこに、、、」
「分かってます。聞きました」
「、、、、、、」
「今日は色々な誤解を解くのとこれからを相談しに来ました」
「あれ?立原さん?学くんも?」
そこには夏樹がいた。夏樹は忠男の代わりに塩をもらいに来たそうだ。一連のことを夏樹ももちろん知っていたが父親や長男の強引さに勝てなかったそうだ。
「私も申し訳ないとは思ってるんですけど、、、、」
「でもさ!夏樹さん!少しくらい、、、、、その!、、、ここは島だし、、協力って言うか!」
学がいきりたって夏樹を責めた。
「学!もうやめろ!夏樹ちゃんを責めても仕方がない」
「そりゃそうだけど、、、」
「ほんと、ごめんなさい!」
「夏樹ちゃんもこれからの話を聞いて間違わずに氷川さんと忠男くんに伝えて欲しいんだ」
「、、、、、、はい」
立原は学に言われた通り鬼気迫る表情で説明をした。氷川王国を完全にぶっ潰す決意を強い言葉で言った。
「やるかやられるか、それくらいの覚悟でやる!だから木崎さん、協力してくれないか?」
「、、、、、、、」
夏樹の前だから言い難いのか、それとも完全に心まで植民地化してしまったのか分からないがキレが悪い。
「私は元自衛官で防衛省にも勤務してまして、その、、、氷川グループと言えば、国家にとっても大切な企業ですから、、、、」
なるほど。木崎は国家に忠誠を誓う気持ちを今も持っているようだ。立原の言う「ぶっ潰す」がどれくらい本気かは分かったが日本は法治国家なので「ぶっ潰す」は犯罪の可能性もある。それに加えて氷川尚吾と忠男にもし万が一のことがあったら国への反感とも取れる。そのこと自体が木崎の生き方を否定するものなのだ。
「あの、、、私からも父と兄に言いますので、その、、、、物騒な考えは、、、、、」
夏樹も立原の勢いに本気を感じ止めに入った。立原と木崎にとっては氷川王国は悪いことをしたのかも知れないが家族が「ぶっ潰される」ことを「はい、そうですか」と言えないのは当たり前だ。
「いや。もう決めたんだ。木崎さんがやらなくてもうちだけでもやる」
横で聞いていた圭介がギラギラした目で木崎に言った。
「父さん!やろうよ!どうせこのままいても氷川さんの奴隷だよ!」
「、、、、、、」
「、、、、、、」
夏樹には耳の痛い言葉だ。しかし父と兄がそう言うことをしたのであれば当然の怒りだ。父と兄に謝ってもらうしかないと思った。
「父さん!いつも言ってたよね!シリアでもイラクでも、俺が戦争なんて馬鹿のやることだ!って言ったら、これは正義の戦いだ!日本を守り弱者を守る作戦だ!って!弱者は立原さんちや俺たちだよ。俺たちを助けるのが自衛隊でしょ!」
「、、、、!」
正義、弱者を守る、自衛隊、木崎の奥底でメラメラと自衛隊魂が再熱していた。
「、、、、うん。そうだな、、、、うん」
「どうでしょうか、木崎さん?」
「、、、、、やりましょう」
「え?」
「やりますよ!これは正義の戦いだ!」
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